冬の華
ドアの向こう背を預けて膝を抱え蹲る彼女。

手を伸ばせば届く距離で、
ドアがなきゃそのままこの腕に、閉じ込めてしまいたい。

こんな気持ち感じたことがない。

目の前に居る誰かを…、
唯、抱き締めたかった。

小さな体を更に小さくして、
小刻みに震えてるのは…、

泣いてるのか?

今になって、
恐ろしさに気付いたのか…。

冷静になれば、
得体の知れないモンに何時何処で狙われるか分からない恐怖は…

半端じゃないはずだ。

そうだよな…、

元彼の死霊にさえ
あんな震え上がって…。

帰れなくなったんだしな。

相手にするのは比べ物にならない化け物だ…。

彼女の背が当たる面に、
ドア越しに手を重ねる。

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