冬の華
俺は未だ気付いてなかった。

「なぁ…例え会えなくなっても…
俺は君を守るって約束する」

上手く言葉に出来ないもどかしい思いを伝える手段を、
俺は知らないから…。

せめて温もりだけでも…。
届けたい。

このドアが媒介となり、

俺の気が彼女を包む。

二度と触れることも出来ない女。

彼女も又、
自らの体を大事に抱き締めた。

その体はもう震えてはいない。

「悪かったな…巻き込んで…。
この数週間、マジで…」

マジで…、何だ?
楽しかったって?
確にそうだが、
それだけじゃ足りない。

この気持ちを表す言葉。

嬉しかったってのか?
それも無くはないんだろうけど、
やっぱそれだけじゃ足りない。

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