冬の華
彼女が立ち上がり
ドアから離れ、
姿を見失って、
漸くこの不可思議な感覚の異変に気付いた。

何故…不透明なドア越しの彼女が見えたのか…。

先程籠城した時には、
見えることはなかった。

そしてまたノブを掴む彼女が、
目の前に現れる…。

ゆっくり静かに開けていくドアと俺に向かい開かれていくドアが…奇妙に重なる違和感。

開け放されたドア。
目の前の彼女が現実に合わさる。

思わず息を飲んだ。

透視…。

辿り着く結論は、
とても信じ難い馬鹿げた考えで、俺自身がおかしくて笑えてきた。

透視が出来るなら、
目の前に立つ彼女も剥けるはず…

だが…。

やっぱ有り得ないじゃないか…。一向に望む姿は現さなかった。

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