神様・俺様・速人様

やりきれない気持ちのまま、コンサートを迎えた。

「やっばい!!カッコいい♪」
史華はもう失神寸前。

綾那はずっとうちわを振り回してる。

あたしたちは、メンバーがコンサートの時に通る、真ん中の通路席の一番前。吉哉いわく、ここが一番いいんだってさ。


周りの女の子たちは、多分みんな速人ファンなんだろう。
そう思うと、何故か悲しくなる。

あたしは、速人からチケットもらったんだよ?いいでしょって…自慢したくなる。
秋穂って呼ばれてるんだよ?すごくないって言ってやりたくなる…

気に入ったって言われ…………

うん?

待って待って待って待って待って待って待って待って
あたし、気に入ったって言われたよね…

意味が今更ながらわかりませんが…

『ねえ、史華…あたし速人に気に入ったって言われた…』

すると史華は悲しそうな顔をしてあたしの顔を見た。
「速人くんて……」

何故かその後の言葉が怖い…

あたしは、走り出した。
「ちょっ秋穂!?」

客なんて関係ない。
ぶつかりながら、外へ出た。

乱れる息を整え、ベンチに座る。



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