神様・俺様・速人様
ほんとに…史華は恋をしている顔だ…
『速人…すごいな』
ほんとに一瞬だけど、速人が芸能人じゃなく、一人の男としてかっこよく見えた気がした。
「やっぱ雅文はかっこいいよ~」
綾那もうっとりしている。
『そうだね!!』
「ありゃ?秋穂元気出た?」
史華が安心したようにあたしに言った。
『ふふっちょっとね』
─────……
三時間程度のコンサートが終わり、みんなぞろぞろ帰って行く。
あたしたちは…というと。
「史華」
「吉哉~」
「綾那ちゃん!!」
「雅文~」
「………おい」
『はい』
──て…何ですか…これは…カップルですか?
しかも!!!!
何であたしは、「おい」なわけ!?わけわかんない!!
クソ速人め!!!!!!!!!
「帰ろうか!」吉哉がそう言って、車を出してくれた。
──…
みんなキャイキャイはしゃいでいるけど、あたしは観客の声援が頭に響いていたので頭が痛くて、それどころじゃなかった。
「おい」
速人があたしを呼んだ。
『ん………ぁ何?』
窓越しにもたれていた体を起こし、振り向いた。
「頭痛いなら、こっちこいよ。」
────……
え?
速人も、そしてみんなも、話に夢中になって、あたしに気が付いていなかったのに…
「何してんだよ。ほら。」
速人は、吉哉に車を止めさせ、あたしを後ろの席に呼んだ。
「頭痛いならちゃんと言えよ。」
そう言うと、あたしの頭を自分の膝の上においた。