終局の狭間で、キミと。
「……おはよう」

 重いまぶたを軽くこすりながらリビングに行くと、馨の声がした。

「馨? どこー?」
「キッチン」

 キッチンに、馨が立っていた。

「……何、してるの?」
「朝ごはん作り」

 見ると、馨は卵を握り締めていて。
その下にはきらきら輝く金属のボウル。

「卵焼き、作ろうと思ってさ」
「いいわよ、私が作るわ」

 馨から卵を受け取ろうと手を差し伸ばしても、卵を握り締めたまま離そうとしない。

「……卵」
「いいよ、茉莉亜はリビングの方でだらけてて」

 だらけないわよ、今起きたばかりだもの。

それより卵。


「いいんだ、僕が作るから」

「…………そう」



 そこまで言うなら別にいいわ。
卵しとつでモメるのもくだらない。









「…………馨ー?」

 あまりにも遅いから、訊いてみた。

反応、なし。


「さっきから、焦げ臭いんだけど」
「…………」

 ノーコメントを貫く気?

キッチンに向かうと、フライパンと格闘している馨がいた。


「……茉莉亜」
「何?」
「卵焼き、ってさ、フライパンで割った卵焼けば出来るんじゃなかったっけ?」
「……理論上は」
「…………出来なかった」

 フライパンには、焦げて炭と化した卵焼き、というか目玉焼きがのっていた。
というか、こびりついてる。


「なにしたらこうなったの?」
「卵割ってフライパン熱して卵入れた」
「……そうしたら、こうなったの?」
「うん」

 油忘れてない?


「ちゃんと油ひいた?」
「…………あ」

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