青空の奇跡


「もう帰るとこだよ。かっちゃんは?」


「んー、俺も帰ろっかな‥‥
菜々子、一緒に帰るか?」


「いいよ!今日あたし一人だし。」


「じゃぁ、ちょっと荷物取ってくるな。」



自習室に物音をたてないように戻る。
机に散らかった俺の教材をまとめて鞄に入れ、辞書を手に取ろうとした瞬間

手が滑べってしまった



ドン!



分厚い辞書がフローリングの床に勢いよく打ちつけられた。
その音に瞬時に反応した周りの目が、刺さるかのように怖く、鋭かった。


俺はパッと辞書を拾い上げて、自習室を後にした。

そのまま軽く早歩きで辞書を一階カウンターに返却し、図書館を足早に抜け出した。



「かっちゃん!こっちこっち!」


駐輪場方面の出口に設けられたベンチに手をふる菜々子の姿があった。


俺は張りつめた気が抜けた感覚がして、一度深呼吸してから菜々子のもとに向かった。




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