In The Rain
「最近、休日出勤多いね。」


「まぁね、平日に早く帰る分、仕事もたまるわな。」


「大変だね。」


「あぁ、まっ、行ってくるよ」


「帰り遅いの?」


「ん〜、そうでもない。行ってくるよ。」


「はい、行ってらっしゃい。」




土曜日の朝の繁華街。人気のない駐車場で、助手席を片付けた。


HDDの音楽をかけたままミクを待つ。

3曲目のギターソロの途中で、RAV4の助手席が開いた。


「音、大きすぎ。」


何ちゅう第一声ですか?

「おはよ。どこいく?」


ボリュームを下げながらボクから聞いてみた。


「ん?どこでもいいよ。」

「ん〜?たまには温泉とか?」


「えっ?今から?」


「んっ?じゃあヤメタ。どこ行く?」


とりあえず、RAV4は都市高速にのった。


「買い物行こう。」


あぁ、やっぱり。

そのつもりだよ。


「あぁ、買うもの無いけどね。」


「い〜の。楽しいから。」

「ボクもい〜よ。ミクとなら…。」


ボクの左手はミクの右手と重なりお互い握りあう。


少しの時間もムダにはしたくなかった。




生活基盤のない街では、ボクらも普通に溶け込む。


ミクは本当に何を買うわけでもない。


時折、立ち止まるけど、ほとんどが、ただ、ぼくの手を握り歩くだけだ。


普通にランチを食べ、精算しようとすると、ワリカンしたがる。


そんな、何でもない事の全てが愛おしく楽しい時間だった。



そして、いつも通りの休憩へと流れていく。


ボク達は形のないものを求めて、お互いを求め合った。


ボクはミクの至る所にキスをして、ミクもボクにキスをする。


気が遠くなる程の快楽が愛ならば、こんなにわかりやすいモノはないのに…。
< 41 / 102 >

この作品をシェア

pagetop