In The Rain
うっすらと見える半月が優しく見える夜だった。



念のため、オレは更衣室に置いてある予備のスーツに着替えた。


電話のヨウコは渋っていたが、最後はしょうがないと諦めたようだ。




一週間の疲れが無いとは言えなかった。

正直、体はしんどい。

それでも、エンジンをかけ、DVDをいれて、気持ちは動きだしている。



薬局行って一本飲んでいくか。




夏の横風にハンドルをとられながら、約束の23時に間に合うように高速を走らせた。




ミクの地元…、やっぱり嫌だろうか…、どんなに愛しあっていたとしても、所詮は不倫なんだし…。


元来のマイナス思考がボクを不安にさせる。


正直、怖かった。

きっと無理もさせてる。

ボクの最初の笑顔にどんな対応をするのか…。

もし、失敗して、これが最後になったら…。


そんな悪い方へと転がる自分を必死で抑えながら、無理やり自分を楽しめる方向へ向ける。



初めての土地、ミクに会える楽しみ、ゆっくり一泊…………。


ふっ、ダメだ。

やっぱりマイナス思考が邪魔しやがる。








頭の中を整理出来ないまま走り続けていると、無機質な声がボクに話しかけた。




「……1キロメートル先を左、目的地周辺です。注意して………………。」



ナビさん。うるさいよ。



待ち合わせはインター近くのコンビニ…。


不安をかき消して…、1つ笑顔の練習をした。



ここまで来たら行くしかない…。


この妙な緊張感はなんだ?
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