In The Rain

宮本秋人

秋人が春や夏に誕生日だと可笑しいだろう。


当然、秋な訳だ。


今年も当日と週末はヒカルとヨウコに家族で祝ってもらった。



そして次の週末がミクとの約束の日だ。



待ち合わせはいつものバーに23時。

ミクは友達と飲んだ後になるようだ。



ボクはその前にひと仕事…。







「お待たせ。」

「待ってないよ。いこうか。」

キョウコは10分遅れでやってきた。


23時までは4時間30分…、充分。



割と手軽に一軒目を選んだ。

ダイニング系の居酒屋なら文句ないだろう。




しかし、キョウコは楽しそうに喋るし、よく笑う。


オレもオレで声のトーンをあげて楽しさを装う。

これだけ楽しそうに笑えて喋れて、美人。


きっと、この女は自分の価値や見せ方がわかっている。
冷静に見れば、行動や仕草からそれを感じる。


しかも勘違いした、バカ女ではない。

若干のわざとらしさはあるが、正に的確なのだ。


高松君達、若い社員に人気なのも解る。



しかし、同性にはあまり好かれないだろう。



正直、オレはこういう女が嫌いじゃない。

むしろ好きだ。


まっ、だから口説いたんだけど…。




しかしだ、やはりボクには責任がとれない。

結婚して家族があるのも当然だが、そこは関係なく……。


ボクはミクを愛しているのだ。


最早、ボクの全てと言ってもよいほどに………。



だから……


これ以上キョウコを相手にできなかった。




ちょっともったいない気もするけども……。





さて、激しくフラレますか。






その日は朝から強めの雨が降っていた…。


初秋の風が夏の終わりと雨の匂いを運んでいた。
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