In The Rain

黒岩美紅

凍りついた店内を耳障りなpopsが染めていた。



「……き……キト………アキト!」



ねぇさん(マスター)の声で我に帰った。


何分?いや、何秒だろう?ボクは何が起こったのかわからず固まっていた。


一気に回路が繋がる。


どこに?いつから?ミクは店にいたんだ?


歩いて来た方を振り返った。



キョトンとした顔の常連とその連れが5人。

ボクが確認しきれなかった団体だ。



「アキト……、あんたさぁ…ユ…」

「ゴメン、ねぇさん。追うよ。」


「えっ?……ふっ。頑張っておいで。」


「いくら?」


「またでいいから…、追いつけないよ。」


「わりぃ。」


ボクはゴメンの表現だけして出口に向かった。


「皆さん、申し訳ない。楽しんで……。」



出口で一礼と笑顔を他の客に向けて、ボクは飛び出した。





街は人が多い……、ミクの傘は何色だった?服は?


今、22時…。


とりあえず、駅の方へ走った。


道は勘だよ。


駅前のショッピングモールに向かう道の向こうに見慣れた背中と傘があった。


神様…サンキュ。



しかし……どうする?なんて言う?………ボクの中で、大作戦会議が開かれる。


とにかく謝るか…。

逆ギレ?

もう、よくね?このまま辞めちゃう?


バカ



とにかくここは……、クールにいこう。感情には理論で応戦。

はい、これ常識。


そして…信号は青になる。


ボクはひと呼吸してミクへと、向かった。







ボクの中で、会議をしていた小さなボク達が声を揃えて言った。






「作戦名、キムタク。ミッションスタート。」
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