In The Rain
「スイマセン、ハイ。なんとか早く治します。申し訳ありません。」



オレは月曜日の午後から熱をだしていた。


無理して仕事をすると火曜日は朝から高熱だった。




「じゃあ、私たちはいくね。」

「パパ……。」

「うん。大丈夫だから。行ってらっしゃい。」

「冷蔵庫に昼ご飯作ってるから…。行ってきます。」


ヨウコはヒカルを幼稚園に送ってそのままパートにでた。




がらんとした薄暗い部屋に1人……、堕ちてるオレには時間は残酷だった。



しかも高熱で体も重い。


考えるのはミクの事ばかりで…。


いい加減、そんな自分に苛立ちすら覚えていた。









「アキト、愛してるよ」


「ミク…。ボクもだよ。君がボクのすべてなんだ。」


ボクはミクを抱きしめた。


しかし、ミクはその手をゆっくりとほどいた。



「ねえ……………………、あなた誰?何?わかんないよ………。なんでそうなの?………………何を信じたらいいの?」


…あら?


「えっ?ボクは……」


ミクは振り返り、向こう側へ走りだした。



ボクも追って…、すぐにミクの手を掴んだ。


「ちょっと、まって…」


振り返ったミクは泣いていた。


そしてミクは唇をかみしめた。


パァンッ


「ちょ、待って…、ボクは……」




差し伸べた手の先には何もない壁が広がる。



夢ぐらいは楽しいモノをお願いしたい。



1つ溜め息をついて、ベッドから抜け出した。



熱で重い体を動かしてキッチンに向かった。


食欲はないが…喉が乾いた。






ピンポーン




ピンポーン




玄関の呼び出しがなった。しかも、二回。



…うざいなぁ。




渋りながら、ボクは玄関へ向かった。
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