In The Rain
空気が張り詰める。

何をどうするか、何も決まっていなかった。



「はい、薬と水。」

相変わらず、ミクは普通だ…。


「ありがとう。」

ボクはぎこちない…。


「じゃあ、そろそろ帰るね。」


「ちょっと待って。なぁ、ミク。ちょっと話しよう。なんでこうなるんだ?ボク達はウマくやって……。」


「でも、所詮……」


ミクが嫌な単語を言いかけたのをボクは遮った。

「それは最初からわかってた事だし、それでも……」


「そうよ。でも、この前のアレは何?」


「だから、アレは違うって。会社の子を断ってただけで…」


「でも、あんな言い方はない。しかも、それでも良いってなったら?」


「ならないさ。あの子に言い寄る奴もいるし、何より…、ボクにはミクがいれば…。」

「私だって結局、アナタのセフレですからね。そう思ってるでしょう。」

「違う。ミクは違うよ。ボクはキミを……」

「どうだか。ワタシ達は不倫だし、アナタはあんな事してたし……。」

「ミク、キミを愛している。信じてくれないか。」


ボクはいつの間にか、ふらつく足でミクの前に立っていた。



「もう、いいよ。そんなに言わないで…。もう、会わない。その気持ちも重いよ。」

「よくない。いいはずがない。」

「……」

「重いっていうなら…、もう見せない。キミを愛する気持ちは表にださない。他の女がイヤならすべて消す。」

「…………アキト」


「もう、イヤなんだ。誰と居ても孤独な思いは…。ミクと居たい。失いたくない。ミクにそばにいてほしい。その為なら……ボクは何だって捨てる。」


つじつまの合わない、矛盾だらけの言葉だった。
溢れ出す思いが、言葉と必死で耐える涙になっただけだった。



ボクはふらつく頭とよろめく足で、なんとかミクを抱きしめた。



「もう1人は嫌なんだ。ミクじゃなければ…ダメなんだよ。」



「………」



「………」



ミクはボクの腕を拒むわけでも、抱きしめ返すわけでもなく………。



ただ、時間だけが過ぎていた。




沈黙に秒針の音が響いていた。
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