In The Rain
閉めきった部屋の無音がボクの心音を響かせた。




一秒、十秒がとても長く、冷静さを欠いた泣きすがるボクには、それが永遠に続けば…と思っていた。




女々しいとは男に使う言葉だ。だから、男は女々しくていいから、自分の思いに従えばいい。


昔、先輩が言ってたのが頭をよぎった。


今のボクは最高にカッコ悪い、女々しい男だ。


ここまでしたのは、多分初めてだろう。


それでも、ボクは自分の気持ちに従ったのだ。




時間は黙って過ぎていった。









「ねぇ、なんでワタシなの?」


突然、ミクは小さな声でボクに聞いた。


「…………す……だろ………。」

ボクはなぜか声にならなかった。





「その会社の子も、バーのマスターも、ワタシよりずっと綺麗で……」



「好きだからだろ。キミが…。」




「ワタシ、アナタもだけど、結婚してるんだし…」



「だから?それでもキミが好きだ…。」



「ワタシ、そんなに言って貰えるような女じゃないよ。」



「聞こえないか?キミが好きだ、愛してる。」




そう言ったボクの瞳をミクはじっと見ていた。






目の前に無くしたカケラがある……


それは、ボクの心の一番大事なカケラで、美しい。


それが無ければ、形は変わり、醜いモノになってしまだろう。


もう、ボクには言葉も手段もない。


頼む、届いて………。






ボクがその時感じた時間は、そんな事を考えるほど長く思えた。




ミクもボクも、そらす事無く、お互いの瞳だけを見ていた。




















「ねぇ、ワタシ……、めんどくさい女だよ。」


ミクが優しく微笑んだ。

「愛してるよ、ミク。」



ボク達は見つめ続けた瞳を閉じて………キスをした。
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