In The Rain
強く打ちつける雨に引き裂かれる訳にはいかない。

周りから見れば、ボクはバカかもしれない…。

でも、おろすから別れないでと言う…、そんな愛する女をこれ以上泣かせたくなかった。

ボクは目の前のバックミラーを見つめ、ミクは俯いたままだった。

聞こえなかった?っと思う程の沈黙の後…、ミクが喋りだした。

「ありがとう。気を使ってくれるのは嬉しい。でも…、現実は…、無理だよ。」

…かもしれない、でも…。

「気を使うとかじゃ…。もう…、ミクを泣かせたくない。ずっと、側にいたいんだ…。」

「でも…、ワタシが…」


言葉をキスで埋めた。聞きたくない言葉が出る気がしたからだ。

「ボクとじゃあ、嫌?」

ミクは黙って首を振った。

「じゃあ…、ボクら二人の事を考え…」

「アキトは…、子供を、ヒカルちゃんを捨てれる?」


ミクはこぼれる涙も拭かず強い口調でいった。

ボクは黙ってしまった。ボクには、ボクの過去がある…。それは、キツい一言だった。

「ワタシは……。きっと、いつかチカは…、あの子は、ワタシをわかってくれる。愛した人が大事だった事。何より大事な人がいた事。あの子も恋をすれば…きっと、わかってくれる。でも、アキトは…、ヒカルちゃん、置いて行けないでしょ…。」

ボクは……、ヒカルを…、家族を…、壊す事が出来るのか?


「ボクは…、ヒカルが大事だよ、愛してる。あの子に何かあれば、何でもするよ……。」

「だから、ワタシが……おろせば…。」

「それでも、ミクをとるよ。ミクがいるからボクはいるんだ。ミクが泣きながら迎える明日なんかいらない。ミクがボクの全てだから…。ミク、ボクと一緒にいてよ…。一緒に行こう。」


ボクの瞳はミクから離さなかった。いや、離せなかった。ミクにボクの気持ちを伝える為に…。



「…ありがとう。…ホントに…ワタシでいいの?」

「ボクはミクがいいんだよ。」

「ゆっくり考えた方がいいよ。全てが変わるんだから…。」


外は雨がまだ強く降っていた。

それでもボクの中の気持ちも…二人の選択も決まっていた。


冷たそうな秋雨は寄り添いキスするボクらを包んでいた。
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