In The Rain
寒い冬がくるのか、日差しの割には風が冷たい。


仕事が長引いたせいで、月曜、火曜はヨウコと話が出来なかった。


言い訳だ。


普通に別れるなら、いくらでもフラレる方法は思いつくが…。


ただでさえ、大量の元気とパワーを使うのに…。

ヒカルにはどう説明したらいい?



結局、ボクは旦那にも父親にもなれない男なのだ…。

昔、なりたくなかった人間になっている…。




水曜日は早めに帰って、家族で夕食を食べた。





「ヨウコ、ちょっといいか?」

ヒカルを寝かしつけたヨウコをリビングで呼び止めた。


「ん?なに?」


ヨウコはボクと向かい合って座った。



「……。」


いざとなると何も言えない。


「何か飲む?」

ヨウコは沈黙に耐えられなかったのか冷蔵庫に水を取りにいった。


「ありがとう。すまない。」

ボクのきごちなさはなんだ。それでも、話さないといけない。


「どうしたの?」

ヨウコはコップを2つ持って戻ってきた。




「ヨウコ…。すまない。別れてくれないか…。」


ボクはコップの水を見たまま言った。

ヨウコと目が合わせられなかった。



「えっ?なんて…?」


「すまない。別れてくれ。」

今度はきっちり、目を合わせて言った。覚悟は決まっている。


「……。」

ヨウコは何も言わなかった。


ボクは水を口にして話を続けた。


「すまない。すべて…、オレが悪い。オレが出て行くから。」


「ちょっと…いきなりどういう事?なんで…?」


「…すまない。キミは全く悪くない。全てオレが悪いんだ。だから、ゴメン…。」

「何言ってんの?…何で別れないといけないの?」


そうだ。すべてはオレなのだ…。

ここでウソをつくのも違う気がした。


「すまない。好きな女がいるんだ。…すまない。」


「はぁ?何いって…ってか誰?…会社の子?」


ヨウコは涙目でボクを睨みつけた。



言わない方が良い気がしたが…、いずれわかる事だ。





「ミク……、黒岩美紅さんだよ。」
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