In The Rain
街並みを抜ける風は突き刺さるように冷たく、ボクにはロングコートを着ても意味はないようだった。




店に出る前に、CDを買いに寄り道をした。


先輩の今年の冬の歌はセツナク店の中で流れていた。




店の外に出ると2月の空は厚い雲が覆い白い雪が、ゆっくりと降り始めていた。



こういうちょっとした出来事や光景の全てでミクの笑顔を思い出してしまうのは…、まだ、ボクがミクを忘れていないからなのか……。



街の片隅にあるはずのない物を探して歩くボクがそこにはいた。



「あっ………?」



道の向こう側をミクによく似た人がこちらに向かって歩いていた。


しかし、すぐにわかる…。

それはいつもの事だが、違う人だ。







そう、違う………。







「……、アキト?久しぶり。どうしたの?今、仕事中?」




その女性はボクに近づき、微笑んで言った。






「えっ?………ユキ?」
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