In The Rain
北風にずり落ちそうなマフラーを治してユキを見送った右手をポケットに突っ込みボクは歩き始めた。



すれ違う人達は寒さに背中を丸めていたが、ボクはユキとの昔の事を思い出してゆっくり雪の降る空を見上げた。























ドン!!







背中から誰かがボクにぶつかった。




なんか妙な熱さを背中に感じて首だけで振り向いた。





「く、黒岩…?」




そこには、あの頃よりもふた周りぐらい太り、無精ひげを生やしている、黒岩がいた。




「ミクは……?」




「はっ?知らない……。別れたから。」




「うそつけ!オマエさえいなければ……。」




ズン!




鈍い音と共に黒岩はそのままの体制でボクの背中をもう一押した。



あっつ!!


熱い……。





ボクは背中に手を回す。

ヌメっとした感覚が次の感覚を呼び起こした。




「あっ、……痛っ、……いってぇ〜。」



ボクは黒岩を振り払い、そのまま崩れ落ちた。




「キャー!!!」




すれ違ったOLが声をあげて、周りの人混みがざわめきたつ。



黒岩は真っ赤に汚れた手と腹で、ボクを見下ろして笑っていた。



「キャー!!ちょっと…」


「大丈夫ですか?きゅ、救急車…、警察…?」




人混みが騒ぎはじめる…。



うるさいよ…。


いった〜。



いや、痛いから。マジで……。あ〜、もう…。







「アキト……」



騒ぎにユキが戻ってきたようだ。


ユキは前のめりに倒れたボクを抱き起こす。


「スイマセン、救急車…、救急車お願いします。アキト…ねぇ、アキト…」
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