捧げられし姫君
序章
昔、むかし。
と、いうほどでもないちょっと前の話。
ジャファルフィフヌーンという、とても名前の長い国がありました。
通称ジャファルは、大陸の端にある、どうってことのない小さな国で、
特徴といったら名前が長いことと、美しい姫君がいることぐらいでした。
しかし、平穏な暮らしを望んでいる姫君の思いとは裏腹に、隣のゼルエス国へ嫁ぐことになってしまったのです。
ゼルエスは大陸内でも指折りの大国。
既に後宮は大小様々な国の姫君で溢れかえっていました。
そんな中に今更小国の姫君が一人嫁いでも、歓迎されるわけもなく。