捧げられし姫君
先程の女たちがファラーシャを呼び、後宮の外へ案内する。
そして、後宮の外で待っていた衛兵にファラーシャは引き渡された。
まるで囚人のようだ。
空気が重苦しい。
「王座の前まで行きましたら階下で平伏し、王が良いと言ったらご挨拶を。
挨拶が終わりましたら、二度拝礼をし、王が退座しましたら、あなたも下がってください」
道中、衛兵の中で最も身分の高そうな男が、淡々と謁見についての説明をした。
ファラーシャは黙って手順を頭に叩き込む。
失敗は許されなかった。
衛兵たちに連れられ、初めて王城の奥へと足を踏み入れる。
外から見てもその豪華さは際立ったものだったが、内装も負けず劣らないものだった。
特に一面に敷かれた絨毯は、微細な蔦模様が描かれ、一目で値の張るものだと分かる。
足で踏んでしまうのが勿体ないほどだ。
躊躇するファラーシャを衛兵たちがどう誤解したのか、ちらりと意味ありげな一瞥をする。
王との謁見に怖じけづいていると思われるのは癪だ。
ファラーシャは、きっと睨みつけるように前を向く。
そんなファラーシャの目の前で謁見の間へと続く扉が、ゆっくりと開いていった。
王座まで続く赤い絨毯のその先に、後宮で会った男、イードが座っている。
ファラーシャは、イードの元へ足を踏み出した。