深淵

　男は立ち上がって冷蔵庫から缶コーヒーを二つ取出し、一つキョウスケに放った。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

「・・どう呼べばいいですか？」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　渡された缶コーヒーを開けて一口飲んで、キョウスケはそう男に訊いた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

「ゼロじゃさすがにかっこ悪いからなー。センセイでいいかな。片仮名な感じで」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

「・・・わかりました。あと、どうして俺を？」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　キョウスケはセンセイの表情を窺うようにしてそう訊ねた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　反抗的ではないが信仰心も見受けられないと、セカンドから伝えられているはずだ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　キョウスケにはどうして自分がセンセイに呼ばれたのかわからなかった。