深淵
「ではセカンドは多重人格ではなく、あなたがマインドコントロールした結果、あの状態になった。違いますか?」                                

「素晴らしい。大正解だよ。多重人格でないことぐらい、シンドウさんレベルにもわかると思っていたけど・・まさかその方法まで当てるとはね」                              

 センセイは笑顔のままそう言って、わざとらしく驚いてみせた。                                

「もう子供じゃないんですよ」                                  

 その態度にキョウスケは苛立ちを覚えてそう言い放ったが、センセイは「ごめんごめん」と簡単にあしらった。                                   

・・暖簾に腕押しか。                          

 キョウスケは苛立っても仕方ないと思い、気を取り直すように息を吐いた。
< 105 / 175 >

この作品をシェア

pagetop