深淵
「探していたんだ、彼を」                        

 そう静かに言ったときのセンセイの目に、キョウスケは身震いし恐怖を覚えた。                         

・・変わってないなんて間違いだ。                                

 鋭さは変わってないのかもしれないが、その目が放つ淀んだ光は濃さを増していた。                     


「探していたって・・どうしてです?」                              

「彼を殺す。それが始まりなんだ」                                

 キョウスケは息を飲んだ。                                   
 言葉を吐くたびに益々この場の空気は重さを益していき、キョウスケは押し潰される感覚に捉われた。                   


「まぁその答えはいずれ、わかるよ」
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