深淵
「恐怖心・・ですか?」                         

 戸惑うように言ったキョウスケを見て、センセイは微笑みながら頷いた。                          

「そうだね。でも難しい問いだったよ。若い頃にある感覚ではないかな」                           
「・・えっ?」                             

「答えは君が、良く言えば冷静で、悪く言えば臆病ってことだよ。二人にはそれがないからね」                             
・・俺が臆病?                             

 センセイが出した答えにキョウスケは疑念というより、不満を抱いた。
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