深淵
“純粋な殺意”に感嘆したわけではなく、センセイが答えを口にしたことに驚いたのだ。                    

・・時計を見て、答えを言ったってことは・・・何かが差し迫っているってことか。                            

 キョウスケが思わず身構えたことに気がついていないのか、センセイは珍しくその口調を熱くした。                          

「純粋な殺意というのはひどく危険だ。獣が獲物を食らうときのそれに似ている」                                   
「・・あの二人は純粋なんじゃないですか?」                         


 キョウスケは身構えながらも、熱く語るセンセイを鼓舞するような言葉を思わず放った。                                  

「そう。だから純粋な殺意を扱うのは、獣ではなく人間でなければならない」
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