深淵
 その表情は時折見せるセンセイのそれに似ていた。                        

「そうだね。そうするとカ二バリズムというのは怪しいかな」                                

 センセイはこめかみを中指でトントンと叩きながらそう言って、「本当に彼は血を飲んでいた?」と続けた。                                  
 キョウスケも同じ疑問を抱き、目を閉じてあの日のことを思い返していた。                         

「よくよく考えてみますと・・俺もセカンドも血を飲んだような仕草は見ましたが、実際飲んだのかは確認していません」                             
「とすると嘘か、秩序を持った者に近い混合型か」                         

 センセイはそう呟くように言うと「だとしたら、面倒だな」と言ってキョウスケに目を向けた。
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