深淵
 キョウスケはシンドウのこれまでの言動、行動を思い浮かべた。      


 高圧的で攻撃的な言動はシンドウの特徴だ。



 行動も粗暴で言動と何ら変わらない。



 それだけなら何の問題もない。




 問題なのは、キョウスケに送りつけた今回のメールや、セカンドの尾行を読んで退けたシンドウの知能の高さが見え隠れしていることだ。




 それに何度もキョウスケを仲間にしようとしているところを考えると、ゼロを警戒しているに違いない。            

 キョウスケを従わせたいのなら腕力に物を言わせればいい。



 言動、行動とは裏腹の知的で臆病な面をシンドウは秘めている。      



・・何か見落としがあるな。




 シンドウのこれまでの行動を頭で再生していく内に、キョウスケはもう一つ特徴を思い出した。




「・・あぁ、そうか。そうだった」        



 キョウスケは目を開けると、額を軽く叩いて声にならない声で笑った。
< 163 / 175 >

この作品をシェア

pagetop