深淵
 戦士の日が訪れるとシンドウは周囲を睨むようにしながら歩いていた。



 この三日間も警戒はしていたが、今日はより一層警戒を強めていた。       


 それはキョウスケが襲撃してくるならこの日だと、シンドウは確信していたからだ。                                 

・・返り討ちにしてやる。



 タバコのフィルターを噛み締め、シンドウは顔を震わせた。 



 武者震いなのか、不安からなのか。



 シンドウはキョウスケという頭の切れる仲間が欲しかった。



 たとえセカンドが手駒の一つであっても殺されたと知ったら、ゼロが仕返しにくるとシンドウは考えていた。



 ゼロ自ら行動を起こすことはなく、おそらくキョウスケを遣うに違いない。



 だからゼロがキョウスケに接触する前に、自分が先に接触してキョウスケを仲間にしたかった。  



 もし仲間にならなくともキョウスケを殺しておけばゼロとほぼ対等になれる。
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