深淵
 シンドウはそう考えていた。                                  
 ゼロを殺してシンドウはしもべとして、新しくバーサーカーを結成するつもりだ。



 自分をピラミッドの頂とし、三人という少人数ではなく、全国各地にいくつものチームを作るのがシンドウの目論みだ。



 あらゆる犯罪に手を出し、金と女を獲て、世の中に混乱をもたらす。



 いつしかシンドウは、そんな壮大で狂った夢を描くようになった。



 シンドウにとっては至って普通の思想だ。



 幼少期から少数のグループを結成しては、周囲を取り仕切っていた。



 最初はそれで問題はなかった。



 けれど青年期に差し掛かったとき、「どうして自分と対等の人間がいるのか?」と思うようになっていった。



 シンドウは独裁者になりたかったのだろう。



 これまではその望みは叶わなかった。



 体制が出来上がってしまっては、独裁者になることは難しい。
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