深淵
 毎回狩りに行かなくても、血を定期的に体に取り込むためにシンドウが考えた方法だった。                              
 シンドウは、自分の血が枯渇するという不治の病にかかったと妄想していた。


 だから定期的に血を採らなければと思い、その妄想に捉われた頃は犬や猫の小動物から血を採り、就職してからは営業先の病院から輸血用の血を盗んでいた。


 そしてそのことに限界を感じた頃にセカンドとキョウスケに出会って、シンドウは新鮮な人間の血を初めて口にした。      


 犬や猫、輸血用の血より、殺したての人間、特に若い女の血はシンドウには至上の物だった。



 そのこともあってシンドウは、自分が動かずとも部下が若い女を連れてきて、犯しながら血を飲める環境がほしくなり、ゼロを殺して独裁者になることを強く望むようになった。   



「もうこんな時間か・・」



 落ち着いたシンドウは時計に目を向けると、11時半を過ぎていた。


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