深淵
・・痛ぇ。頭がガンガンする。



「起きねーな・・シンドウさん」         


 聞き覚えのある声を耳にしたシンドウは、朦朧とする意識の中で目蓋を少し開けた。




「・・キョ、キョウスケ?」



「あっ、どうも。気分はどうです?」       


 薄らと映ったキョウスケは笑顔でそう言って、ゆっくりとしゃがみ込んだ。 


 シンドウは何が起こっているのか理解できず戸惑いながらも体を動かそうとした。          


・・ん?



「無駄ですよ。結束バンドっていうのかな?それを使いました」




 シンドウは両手両足を結束バンドで縛られていた。


 悶えるように動くシンドウを見てキョウスケは嘲るように「無駄ですって」と言って、革手袋をはめた手でシンドウの髪を掴んだ。


「あんたの負けだよ」  


「・・な、なんで?・・・いつから尾行していたんだ?」                                  
 キョウスケはシンドウの目を覚まさせようと不意に顔を二、三度軽く平手で叩いた。
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