深淵
 到着したのはネットカフェから少し離れた高層のホテルだった。                              

「あんたの親戚金持ちだねー」                                  

 運転手はそう言ってホテルの前から去っていった。                        

 キョウスケがホテルの中に入るとすぐに携帯が鳴った。                                  
“六階の612号室に来てください”とゼロからのメールだった。                              

 外観同様、豪華な内装に圧倒されながら、キョウスケは何食わぬ顔でエレベーターに乗り612号室に向かった。                                

 そして六階に着くなりトイレに入って、靴から平べったいナイフを取出してポケットにしまい込んだ。                         
 準備を整えると612号室のドアをノックした。
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