◆太陽のごとくあいつは◆
『あの頃はオレにもデカい夢があったなぁ…
オレの親父はスポーツ界のオチコボレってやつでさ、
同期のやつらがどんどんジムの主宰者やコーチになっていくのを横目で見ながら
"お前にだけは大成してほしいよ"
って、よくガキのオレに言ってた。』
二人はレストランを後にし、車に乗り込んだ。
しばらく沈黙が続き、友枝は話を続けた。
『だから、オレは…2人分の夢を背負って今までやってきた。
オレは自分を信じてたし、何よりも日本のスポーツ界…ビーチバレー界を信じてたから。』
だが、今になってわかったことがある…
ただ単に親父は才能がなかっただけじゃなく-----
良心のみ抱えて、要領が悪かったってことがさ…
言わなかったが、友枝は切なげな顔でそう心でつぶやいた。
美夏はずっと黙って彼の話に聞き入っていた。
友枝がため息をついてタバコを銜えなおすと、美夏は運転している友枝の肩に寄り添った。
『ね…もっと話して…?
だって友枝さん、そんなこと今まで話してくれなかったし。』
『ワインがまわってきたかな…』
フッと友枝は笑って、美夏の肩を抱いた。
車は海岸前の駐車場に止まった。
車の中が静かになって、遠くで楽しそうな人々の笑い声や掛け声が聞こえてくる。
美夏の肩を抱く力が強くなった。
友枝が口を開く。
『雛森……』