◆太陽のごとくあいつは◆



友枝の顔がゆっくりと近づいてきて、美夏が目を閉じると、唇に柔らかな感触が感じられた。


すぐに唇は離れた。





車から降り、車のドアの前で二人は向かい合って立っていた。



『雛森……オレとベガスに行かないか?』



え…?


友枝は続けた。




『この大会が終わったら日本を抜け出してさ。

外国で新しくスタートを切りたくてね。




…今更ムシのいい話かもしれないが、オレと一緒に行く気…ない?』





美夏が返事を一瞬躊躇すると、友枝が悲しい顔をした。



『行く…あたし行きたい』




小さく美夏がそう答えると、友枝は美夏の目にキスを落とし、鼻へ、耳へ、といって、それから唇を重ねた。



深い深いキスだった。






晶螺のことは頭から消えていた。


目の前の愛しさしか見えていなかった。





もういいよね、千佳…千佳との約束……


"約束する。もう友枝さんとは会わないって"


千佳が自分から振ったんなら…もう無効でしょ?

だって、あたしどんどん本気になっちゃうもん…-------



美夏はそう胸に語りかけながら目をつぶった。




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