聖夜の約束
あたしは生い立ちをアパートに着くまでに全て話し終えた。


「・・・・・・それで今に至ります」


夏姫の右手はレイのコートのポケットの中。


ポケットの中ではギュッと握られていて温かい。


レイは夏姫の今までの生い立ちを聞いて胸が締め付けられた。


自分が育った環境とは雲泥の差。


恵まれすぎた自分。


苦労して育った夏姫さん・・・。


幼い頃の夏姫を想像すると胸がつまり苦しくなった。



「どうしたの?レイくん どうしてそんなに悲しそうな顔になるの?」


「夏姫さん・・・・」


レイが立ち止まる。


もう少しでアパートという場所だ。


「レイくん・・・?」


レイはつないでいない方の手で夏姫の肩を引き寄せた。


「きゃっ!」


人が行きかう通りで抱きしめられて夏姫はレイの腕から逃れようとした。


「レイくんっ 人が見てるっ!」


「かまわないよ・・・」


レイは夏姫の肩に顔を埋めてつぶやく。


「レイくん?恥かしい やめようよ」


夏姫が真っ赤になって慌てる。


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