聖夜の約束
「夏姫さんは色々な家を転々としたから、初めて会った日に俺が行く所がないって言うとすぐに泊めてくれたんだね?」


夏姫さんみたいに男慣れをしていない女性が見知らぬ男を泊めるのは今考えるとありえない。


「・・・行く所がなかったら可愛そうでしょ?」


その言葉は幼い頃の事を思い出しているみたいで寂しそうに聞こえた。


レイは軽い気持ちで行く所がないと言ってしまった事を後悔していた。


夏姫さんの気持ちを知らなかったとはいえよくなかった。


「・・・ごめん 夏姫さん そうとは知らずに行く所がないなんて言って 本当は行く所はあったんだ」


レイの落ち込みように夏姫が声を出して笑った。


「ばっかじゃないの?そんな悲しそうな顔しないで?あの時はあたし酔っ払ってたし・・・レイくん、物を取りに帰ったでしょ?家があるのはわかってたよ。家に帰りたがらないのはおうちに居づらいのかなって思っただけ」


(レイくんが泊まる事が怖くなかった)


「夏姫さん・・・・嘘をついてごめん」


「もうっ そんな事良いから♪お茶飲もうよ とびきり濃くしたからね」


レイが濃いお茶が好きなのを知っていたからだ。


レイにお茶を勧めて夏姫はお茶を一口飲んだ。


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