シンちゃんはまだ来ない

僕はペタリと座り込んでタバコの煙を夜空に吹き付けた


一週間もここに通えば、最初感じた恐怖は消えてしまった

海から運ばれる風を感じるたび

僕は自分が大人になって行くような気がした。

色んな人達の笑い声やバイクの排気音も

この場所でこの闇を共有する絆のように感じた。


中3になった時からシンちゃんは僕にタバコを勧めてきた。

だけど僕は親にバレるのが嫌で断ってきた。

なのに、ここに来るようになって、僕はすぐにタバコを吸うようになった

「いいか?ちゃんと肺に入れるんだぞ」

火も付けていないのにタバコの葉っぱの匂いが口の中に広がった

恐る恐るタバコを吸って、煙を肺に入れると

喉の奥がキュッ締まるような感覚がして、思わずむせかえってしまった。

シンちゃんとマユはゲラゲラと笑っていた。

「こうやって吸うんだよ」

そういってシンちゃんは右手の人差し指と中指、そして親指でタバコをはさんで

得意げにタバコを吸って見せた。

「私にもちょうだい」

そういってマユがタバコをくわえると、シンちゃんはタバコをくわえたまま

マユの口元に近づいた

火の付いていないタバコをくわえたマユはその先をシンちゃんのタバコの火の先に

持って行き、お互いのタバコの先端をくっつけた。

シンちゃんが大きくタバコを吸うと、その先端が赤く輝いた。

その輝きを吸い取るように、マユがタバコを吸うと、

その輝きがマユのタバコに移った。

「こうやって吸うんだよ」

マユはシンちゃんの真似をして、得意げにタバコを吸って見せた。


二人が付き合っているのは勿論知っている。

時々僕に隠れてキスしているのだって知っている。

そしてこの時僕は、2人がSEXしてるんだなと、そう感じた。


僕はタバコをもう一度深く吸い込んだ。

喉の奥がキュッと締まった。

だけどもう、むせ返らなかった。
< 2 / 4 >

この作品をシェア

pagetop