吸い終えた煙草を親指と人差し指で挟んで

ピッと弾き飛ばした。

赤い光は闇の中に飛んで行き、地面に落ちると

小さく火がはじけた。

タバコが美味しいとは今でも全く思わない。

ただ、この場所に来る時は必ず持ってくるようになっていた。



僕とシンちゃんは中1の時に同じクラスになって知り合った。

僕が出席番号18番、シンちゃんが19番。

シンちゃんが学校指定の運動靴を履いて来たのは入学式の日だけだった

次の日から、真っ赤なスニーカーで登校してきた。

その次の日は紫の靴下を履いて来た。

その次の日は、眉毛が細くなっていた。

「俺、次はピアス開けようと思ってるんだけど、似合うかな?」

厄介な奴と同じクラスになったなぁと思っていた僕に

シンちゃんが話しかけてきたのは入学式から4日後の事だった。

朝のホームルームで担任に名指しで怒られた後の、

1時限目、国語の時間、何事も無かったかのように

シンちゃんは僕の肩を叩いて話しかけてきたのだ。

「どう思う?やっぱりピアスって痛いのかな?」

クククと悪戯っぽく笑うシンちゃんはとても格好良かった。

国語の教師がコッチを睨んでいた。

「どうだろう?でも、多分、痛いと思うよ。やっぱり」

「やっぱりそうかな?痛いかな?でも、俺、ピアスしたいんだよな~」

国語の教師の咳払いを全く気にする事なくシンちゃんは僕に

どんなピアスが良いとか、何個開けたら格好良いかを、話し続けた。

その日の昼休み、シンちゃんは職員室に呼ばれ、

それから一週間学校に来なかった。

久々に登校してきたシンちゃんの耳には3つ穴が開いていた。

「やっちゃった~」

満面の笑顔で真っ直ぐに僕の方にやって来て、ピアス穴開け大作戦を語ってくれた。

シンちゃんは僕の何を気に入ってくれたのだろう?

分からないけれど、僕は、僕には出来ない事を平気でやってのける

シンちゃんに憧れのような感情を抱くようになって、

僕とシンちゃんはツルむようになった
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