世界の神秘(短編)
「……そんなに吸われたいなら、望み通りにしてやっても良い。ただし、後悔するなよ。」
俺と、永遠を生きることを。そう告げたら、希望に満ちた瞳がこちらを向く。お前はやはり、そういう表情をするんだな。俺が生きられるなら、手段は問わないって訳か。
華奢な体をベッドに倒して、鋭く尖った二本の凶器を彼女の首筋に宛がう。月明かりが、その体を妖しく浮かび上がらせる。目前に迫った甘い香りに、気が狂いそうになった。
欲しい、ほしい、ホシイ。
「ノア……良いよ。吸って……」
隠しきれない怯えを纏った声で、女が言う。馬鹿だな、本当に。お前がここに居るだけで、俺はこんなにも満たされているのに。
血が欲しいのは、確かに俺の本能だけど。俺は自分の命の源がそんな赤い液体なんかじゃなくて、目の前に居る馬鹿な女の笑顔とか泣き顔とか怒った顔とか、俺の名前を呼ぶ甘い声とか……そういうもんなんじゃないかなって、思ったんだ。
――馬鹿なのは、お前じゃなくて俺の方だったんだな。人間なんかを……お前なんかを愛してしまった、俺の方だったんだな。
俺と、永遠を生きることを。そう告げたら、希望に満ちた瞳がこちらを向く。お前はやはり、そういう表情をするんだな。俺が生きられるなら、手段は問わないって訳か。
華奢な体をベッドに倒して、鋭く尖った二本の凶器を彼女の首筋に宛がう。月明かりが、その体を妖しく浮かび上がらせる。目前に迫った甘い香りに、気が狂いそうになった。
欲しい、ほしい、ホシイ。
「ノア……良いよ。吸って……」
隠しきれない怯えを纏った声で、女が言う。馬鹿だな、本当に。お前がここに居るだけで、俺はこんなにも満たされているのに。
血が欲しいのは、確かに俺の本能だけど。俺は自分の命の源がそんな赤い液体なんかじゃなくて、目の前に居る馬鹿な女の笑顔とか泣き顔とか怒った顔とか、俺の名前を呼ぶ甘い声とか……そういうもんなんじゃないかなって、思ったんだ。
――馬鹿なのは、お前じゃなくて俺の方だったんだな。人間なんかを……お前なんかを愛してしまった、俺の方だったんだな。