ナツ色の恋~最強男が愛した伝説の女~
“親友”とか、
ましてや“彼女”とか、そんなトクベツな存在じゃなくていいと思ってた。
どこにでもいるような、
ありふれた日常の中の、ありふれた人間でいいと思ってた。
それでもいいから、ううん。
そうじゃないと、側にいられないと思った。
だけど。
あたしは“友達”にすらなれなくて、
何の係わり合いも無い、“他人”でしかいられないらしい。
「……あははっ」
それでもいい、なんて言ったら少し嘘になるけど、
あなたが生きているなら、
あたしはなんだっていいの。
「そうかあ、あたしは“友達”じゃないのか。まあ、生きててよかったじゃない!」
ズキズキと痛む胸を隠すように笑った。
愛村はぎゅっとあたしの手を握って自分の胸のところに持っていった。
とくん、とくん
とリズムよく心臓が動いているのを感じた。
「俺、ちゃんと生きてるから、な?」
ポロっと、自分の頬に涙が伝うのがわかった。
愛村の“生きてる”っていう言葉がどうしようもなく、嬉しかった。
「愛村?ホントにホントに愛村?」
「おう」
少しずつ今まで押し込めていた涙が、想いをともに溢れ出していく。
「生きてて…よかったよぉ…っ」
愛村の手を握ったまま、あたしは左腕をベッドに付けて泣きじゃくった
愛村は“ごめん、ありがとう”と言った。