ナツ色の恋~最強男が愛した伝説の女~




「あ、あの…っ!!」


「はい、なんでしょう?」



挙動不審気味なあたしに、看護婦さんが優しく微笑んだ。




今ここはナースセンター。


「鹿波幸雄の部屋はどこですか…」


「あなたは?」


「娘の、鹿波沙南です……」




か細くて、震えた声しか出ない。




「あ、305号室ですね…」



ドクン…


3…05……?






「あ…りがとう…ございます」



ナースセンターを離れ、階段を上る。



305…


305…。



『沙南ちゃん、りんごむいてぇ』




「……はは…っ」



渇いた笑いが階段に響いた。





これはなんの冗談なのだろう…。


運命?それとも、神様のいたずら?

…今は、ばかばかしいと思っていたことを考えてしまう。



305号室、それは

母の病室だった場所。




< 193 / 328 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop