ナツ色の恋~最強男が愛した伝説の女~
「あ、あの…っ!!」
「はい、なんでしょう?」
挙動不審気味なあたしに、看護婦さんが優しく微笑んだ。
今ここはナースセンター。
「鹿波幸雄の部屋はどこですか…」
「あなたは?」
「娘の、鹿波沙南です……」
か細くて、震えた声しか出ない。
「あ、305号室ですね…」
ドクン…
3…05……?
「あ…りがとう…ございます」
ナースセンターを離れ、階段を上る。
305…
305…。
『沙南ちゃん、りんごむいてぇ』
「……はは…っ」
渇いた笑いが階段に響いた。
これはなんの冗談なのだろう…。
運命?それとも、神様のいたずら?
…今は、ばかばかしいと思っていたことを考えてしまう。
305号室、それは
母の病室だった場所。