ナツ色の恋~最強男が愛した伝説の女~
「沙南、また溜め込んだな?」
声を出したら、もっと泣いてしまいそうな気がして声を出せないあたし。
ナツはそんなあたしの頭をずっと撫でてくれてた。
しばらくして、だいぶ落ち着いてきたあたしに、ナツが話しかけた。
「沙南、一人で抱えこむなよ。もっと人を頼れよ…!」
かすれた声でナツは言った。
「あの…ね」
「うん」
今。
今、話さないと何かが壊れる気がした。
今、言葉にしないとナツが離れていくような気がした。
「病院にお父さんがいたの」
「…うん」
「ただの、検査かもしれない…。そう思いたいのに入院服を着てて…久しぶりに見た顔は少しやつれてる気もして…」
数え切れないくらい、不安がある。
「もし、お母さんみたいに病気だったらって…っ!また、家族があたしの目の前で遠くにいっちゃうなんて…やだ…嫌だよぉ…っ!!」
この言葉を境に、
ナツはあたしを抱きしめてくれて、
あたしはたくさん泣いた。
悲しくて、
切なくて、
苦しくて…。