ナツ色の恋~最強男が愛した伝説の女~
急いで立ち上がって、早足で歩く彼女に追いつこうとした。
院内は人が多くて、思うようにうまく進めない。
沙南はまるで誰にもその姿を認識されていないかのように、すいすいと人ごみを通り抜けていく。
そして、1つの病室で、彼女は足を止めた。
ノックをすることなく、病室へ駆け込む。
「……」
ひらっきぱなしのドアの側へ近寄り、中の様子を伺った。
「お父さん……っ!!」
カーテンがかかってよく見えなかったけど、
「誰が…誰がこんな……」
窓から吹いた風が、カーテンをなびかせて、
「……なんで…っ!」
涙を流しながら、父親の手を握る沙南と、
青あざだらけの男の人が目に入った。