ナツ色の恋~最強男が愛した伝説の女~
「沙南?どうした、こんな場所呼び出して」
「ちょっとね」
数日後、あたしはナツを少し遠いところにある橋に呼び出した。
ここは山しか見えなくて、橋の下は川が流れてる。
橋に手をかけて。サラサラサラと水の流れる音を聞きながら、腹をくくった。
「あのね、ナツ」
振り返ったナツは、
「ん?」
優しい微笑みを浮かべていた。
「ずっと、伝えたかったことがあるの」
「…うん」
あたしのトーンから、軽い話じゃないと察したナツは、真顔になって。それが少しあたしの心を凍らした。
「中3の時に、あたしのお母さんが死んでね」
「……鹿波春さん?」
「え?何で知ってるの?」
「ちょっとね、…ほんのちょっとした知り合いなんだよ」
「へぇ……」
お母さんとナツが知り合い?
そんなこと、初めて知った。
今思い返してみれば、みんなでファミレスに行ったあの時、確かにナツはあたしのお母さんの名前を知っていたな。