ナツ色の恋~最強男が愛した伝説の女~
マジ骨折れそうなんですけど。
え?こんなんじゃ折れないって?
いやいや、見てみろよこの男の腕。まじでマッチョなんですけど。
細マッチョとか格好いいもんじゃないからね?ごりマッチョだからね?
「……愛村」
「ん?」
「あいつら、敵?」
「うん」
…おいおい。
ちょっとは焦ろうよ、うん。あたし捕まってるんですけど。
「さっさと潰せや、クソ野郎」
「…ははっ!!」
愛村は楽しそうだった。
その珍光景に味方も、敵も、息を呑みながら眺めていた。
県内最強の男に、上から目線を言う女。
その女を愛しそうに見つめる…
“サタン”という異名を持つ男。
一歩ずつあたしに向かってくる愛村。
レッドテイルのメンバーが好奇の目で見ている。
あたしの腕を掴んでる男の手にだんだんと力が入っていくのがわかった。
「痛いってば!!」
ガンッ!
あまりの痛さに耐え切れなくなったあたしは、男に必殺ひざかっくんをお見舞いした。
ガクッと男が膝から崩れ落ちる姿を見て、どよめく空気。
「コンニチハ」
「…くっ…」
男に話しかける愛村は、
恐ろしいほど冷たい瞳をしていた。
「…やめて……」
誰にも聞こえない声で、あたしは呟いた。
お願い
愛村は、そんな瞳をしないで…。