たいよう


あと、と。
航平は振り返ってこう言った。




「舜にはさーちゃんには想い人がいるから、って言っといた。ついでに。さーちゃんまだあの指輪、持ってるよ」




じゃーねー
と言うだけ言っておいて新聞部の人達に笑顔を振り撒いて出ていきやがった。



何なんだよ、アイツ。
何が言いたいんだよ。
ホントに分からない。



紗愛があの指輪を持ってるって。じゃあ、あの時の紗愛は何なんだよ。意味わかんねぇよ。



ふっと下をみた。
今も昔も変わらない輝き。
安物だ。バイトを週一でやってる今の俺だったら、もうちょっといいものだって買える。
でも、これは大切で、俺にとって金以上の価値を持っている。
紗愛も、持ってるって。
何なんだよ、ソレ。




「去年は航に4人分断られちゃったからね。みんなベスト3に入ってたのに。ということで、取材したくてたまんなかったんだよねー」



と、考え事をしてるといつの間にか航平の友達らしい知らない男に無理矢理椅子に座らせられるはめになった。






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