たいよう
舜のヤツ、さーちゃんのこと好きだからさ、
航平のことばが、頭に鳴り響く。だから、俺は舜の顔を見ることは出来なかった。その言葉を聞いたから、怖かった。何か言われるんじゃないかって。
俺は弱いから。
「先生がさー今日の練習は見れないから、自分らでやれってさ」
舜の口から出てきた言葉は、恐れていたものとは違う、陸上のことだった。
「俺、今日は300がいいなー」
ほっとして、俺は舜の話題に乗っかった。
「えーまじかよ、300とか」
「だって俺、ゆくゆくは200m専門にしようと思ってるし」
初耳だった。
舜が200を選ぶなんて。
俺は勝手にコイツは100mだと思っていたから。
「たかは100mにしろよ。お前は100でてっぺんとれる素質、あるんだからさ」
そしてここまで俺の事を考えてくれてるとは、ビックリしたし、ありがたかった。
.