たいよう





「…っハイっ!」



その声が聞こえた瞬間、手をだす。が、予想していた感触はなかった。俺はスピードを緩めて後ろを振り返った。




「…すいませんっ!」


手を合わせて、申し訳なさそうに走ってくる後輩、大希に気にするな、と声をかける。



「だって、たかにぃ…じゃなかった、空紘先輩、今日300の練習してて疲れてるじゃないですか」



未だコイツの敬語には慣れない。違和感がありすぎる。



「俺をなめんなよ」



と言って笑う。



「そーそ、たかはバケモノだからな」



と余計な事を言うのは勿論、舜。バケモノとはなんだ、とぐーで頭を小突いてやって、大希に言う。



「もう一本やるぞー」




「はいっ!」



そう言って、大希はまたスタートラインへと走っていった。コイツも大きくなったな、とかとしみじみ思う。



「たかにー、いいっすか?」



大希の言葉に、我に返る。結局抜けないもんだな、となんとなくホッとしてオッケーと手を上げる。




< 76 / 94 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop