たいよう

紗愛side








「さーちゃーん!はやくー!」



5月末。晴天のもと、圭斗の声が響く。



「ちょっと、圭斗、まって!」


そう言って、久しぶりの遠出だからかいつも以上にはしゃいでいる圭斗を追いかける。


2年振りの競技場は、あのときのまま。そりゃ、かわるわけないか、競技場なんだし、と苦笑した。でも、もう、二度と来ないと思ってた。ヒロが陸上始めてなかったら、来なかっただろう。だって、ここは思い出が多すぎる。




「…さーちゃん?」



はっと、自分を呼ぶ声で我にかえると、心配そうな圭斗の顔があった。



「ん?」



「どーしたの?」



「なんでもないよ」



そう言って、笑って、圭斗の手を握った。圭斗はふーん、と言ってさっきまでの心配そうな顔から一転、キラキラした笑顔で、あたしの手を引っ張る。





「ひろにぃ、走るんでしょ?」






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