腐ったこの世界で
人買いに買われたあたしは、足枷を外されて薄暗い部屋に放り込まれた。中にはあたしを含めて5人の女の人が居た。みんなボロボロの服を着て、ガリガリに痩せている。
「あれ、新入り?」
聞こえた声に振り返れば同じようにボロボロの服を着た女の子があたしを興味津々と言ったように眺めていた。青い瞳が印象的な、可愛らしい女の子。
「あんたも運がないねぇ。こんなとこに来ちゃうなんて」
その子は笑いながらあたしの側に来ると「まぁ座りなよ」と言ってあたしの側に座った。なんとなくつられて、あたしも一緒に座る。
「あんた、名前は? あたしはアン」
「………18番」
それはさっき、あたしを買った男が言った番号。アンにもそれが分かったのか、少しだけ顔をしかめた。「言いたくないならそれでも良いけど」気分を害したかな、って思ったけどそうでもないらしい。
それからアンは勝手に自分の身の上を語った。どうやらアンは戦争孤児らしい。行き倒れているところを拾われて、気がついたら奴隷市場に連れてこられたと言った。
「戦争・・・?」
「あのアデラート公国侵略さ」
アンの一言に、心臓が嫌な音をたてて軋んだ。